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2005/03/06

保険選び 第5回:医療保険

保険選びの続きです。

最近、CMなどでしきりに「入院日額1万円」が必要、などと言われていますが、実際のところどのくらい必要なのでしょうか。私も以前、手術をして3週間ほど入院したことがあるのですが、結果的には思っていたより全然費用はかかりませんでした。受け取った保険の額と比べると、大幅に黒字でした。つまり、もっと低い保障額の保険で十分だったということです。

入院時に必要になる費用には、以下のものがあります。

■ 入院・手術費用 (医療費)

医療費については高額療養費という制度があって、世帯ごとに、1ヶ月の自己負担額の上限が決められています。限度額を越えた分は健康保険から後で戻ってくるので、実質的な負担額はそれほど高くありません。上限額は、標準的な収入の世帯で72,300円。さらに、高額療養費入院が暦月で3ヶ月を越えると、4ヶ月目からは上限額が40,200円に引き下げられます。この他、健康保険組合によっては独自の給付があって、たとえば1ヶ月の上限額が20,000円という組合もあります。

つまり、標準的な世帯では医療費の負担は1ヶ月で72,300円 (1日あたり2,400円)、1年間入院しても578,700円 (1日あたり1,585円) で済むことになります。

■ 入院費用 (食事療養費)

入院時には、病院食に対する一部負担金があります。額は、標準的な世帯で1日780円 (1ヶ月で23,400円)。3食780円で済むことを考えると、他で食べるより安上がりかもしれません。

■ 入院費用 (差額ベッド代)

4人部屋以下の病室への入院を希望すると、差額ベッド代が必要になることがあります。額は、4人部屋でだいたい2〜5,000円。建前上は、自分から4人部屋以下の病室への入院を希望しない限り、差額ベッド代を請求されることはないはずなのですが、現実的には病院側との力関係で払わざるをえないこともあるようです。状況が許せば、他のまともな病院を探したほうがいいでしょう。

ちなみに私の入院した病院は、4人部屋が標準だったので、4人部屋でしたが差額ベッド代は請求されませんでした。他の病院に比べて、スペースや設備などの病室環境はかなり良かったと思います。

■ 入院費用 (家族の付き添い費用)

遠方から家族が来て付き添う場合は、滞在費が1人1日5,000円以上はかかるでしょう。一般的には、付き添いは必要ありませんし、病院から断わられることも多いと思いますが、患者の病状や年齢によっては病院の近くに家族が滞在する必要があるかもしれません。

■ 入院・手術費用 (医師への心付け)

払うな、としか言えません。たかだか数万から十数万の心付けで患者の扱いが変わるような医師や病院が、信頼できるでしょうか。費用に応じた医療を受けたければ、アメリカに行くべきです。

■ 入院費用 (所得補償)

入院すると、当然その期間は働くことができなくなります。有給休暇が切れたあとは、収入がなくなります。ただし、健康保険から傷病手当金として、 標準報酬日額の6割相当が支給されます。 月給30万円だとすると18万円。 残り4割の12万円 (1日4,000円) が、実際の減少分になります。 傷病手当金の支給は、1年6ヶ月までです。入院がそれより長期になると、休職ではなく退職せざるを得なくなる場合もあるでしょう。

【補足】
トラックバックしていただいて初めて気がつきましたが、市区町村や国保組合が運営する国民健康保険では、原則として傷病手当金が出ません。市区町村や国保組合によっては出ることもあるようなので、詳しくは個別にご確認ください。所得補償がないとすると、所得の減少分を全額補償しなければなりません。とくに自営業の方の場合は深刻です。そもそも、自営業の方が入院すると、収入の心配だけではなく、事業の存続そのものが危機に陥る可能性があります。会社員や公務員とはまた違った視点で保険を検討する必要があるかと思います。これについては、また回を改めて。

■ 入院・手術費用 (健康保険適用外)

健康保険が適用されない治療については、全額自己負担になります。額はさまざまですが、数百万円以上になると思われます。また、臓器移植のうち、実施例の多い腎・生体肝移植については保険が適用されますが、適用されない臓器もあります。この場合、1千万円程度かかってしまうようです。骨髄移植にも保険が適用されますが、骨髄バンクなどへ支払う費用として、 1回50万円程度必要になります。

健康保険適用外の医療費 (高度先端医療の技術料) については、額が高額になるため、通常の医療保険では賄い切れません。専用の保険を検討するか、諦めるかのどちらかです。

以上の費用をまとめると、次のようになります。

費用 金額 (円) 備考
医療費 2,400/日 3ヶ月以内
1,585/日 4ヶ月以上
食事療養費 780/日
差額ベッド代 2〜5,000/日 本来は必要なし
付き添い費用 5,000/日 必要なし
所得補償 4,000/日 月給30万円の場合
高度先端医療
の技術料
数百万円〜 保険適用外費用

私の場合、3週間という短期の入院だったので有給休暇が使え、差額ベッド代も必要なし。結局、医療費2,400円と食事療養費780円の、日額合計3,180円で済みました。もし差額ベッド代が2,000円かかっていたとしても、合計は5,180円。一般的には、30日以内の短期入院ならば日額5,000円の補償額で十分だと思います。

厚生労働省がまとめた『患者調査の概況』の在院期間の項をみると、一般病床の場合で6割の患者が2週間以内に退院しています。また、8割の患者が1ヶ月以内に退院、95%の患者が3ヶ月以内に退院し、入院が3ヶ月以上になる患者は、全体のわずか5%程度です。これには病院側の都合もあって、入院が長期になるほど保険点数が減り、病院にとっては「儲からない」患者になっていきます。そのため、入院が必要のない病状になれば、退院してあとは自宅療養を勧められる、ということもあるのではないかと思います。

入院期間が30日以内 (患者の80%) ならば、必要な費用は日額5,000円で計15万円。所得補償分を加えても30万円程度です。この程度なら、貯蓄で賄える場合も多いでしょう。3ヶ月入院しても (患者の95%)、合計で100万円程度。ギリギリ貯蓄で賄えそうです。リスクヘッジという観点からすると、本当に保険が必要になるのは3ヶ月以上の入院です。しかし、最近さかんに宣伝されている保険は、たとえば入院日数60日までという制限があるものが多く、役に立ちません。また、そうでなくても入院日数を基準にしている保険では、退院して自宅療養する場合に役に立ちません。

保険というのはその性質上、多くの人が損をし、一部の人だけが得をする仕組みになっています。1日わずか150円という保険料であっても、年間にすると5万円を越えます。その額を6年間貯蓄すれば30万円。これでほとんどの場合の入院費用は賄えてしまいます。その人の健康状態にもよりますが、必ずしも保険をかけることだけが賢い選択肢というわけではありません。

以上を踏まえると、医療保険については以下のことが言えると思います。

  • 短期入院用の保険に、高額な補償は必要ない。多くの場合、貯蓄で賄える。
  • 長期入院用・長期自宅療養用の保険が必要である。ただし、長期入院が必要になる確率は低いので、そのときは諦めるという手もある。
  • 高度先端医療の技術料を賄うための保険もあるといいかもしれない。しかし確率はさらに低いので、諦める手もある。

具体的にどの医療保険がいいのかは、次回以降に調べていきたいと思います。

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